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新しい提案をするために現在あるものをしっかり観察しよう!

2019年9月27日掲出

デザイン学部 山岸 由敦 准教授

山岸由敦准教授

 中学生の頃、ソニーのウォークマンと出合い、音楽機器が人々のライフスタイルを変えるほどのパワーを持つことに感動し、ソニーに入社することを決めたという山岸先生。実際にソニーに就職を果たし、ウォークマンのデザイン・商品企画やブランディングなどに携わってこられました。今回は、来年度から始まるデザイン学部の新しい学修体制と、先生の企業経験を活かした研究や教育についてお聞きしました。

■2020年4月から始まる「工業デザイン専攻」の「工業ものづくりデザインコース」についてお聞かせください。

  デザイン学部は、2020年4月より「視覚デザイン専攻」(視覚伝達デザインコース、視覚情報デザインコース)と「工業デザイン専攻」(空間演出デザインコース、工業ものづくりデザインコース)の2専攻4コース体制になります。私自身は、企業で長くプロダクトデザインに携わってきたので、このうちの「工業ものづくりデザインコース」を担当します。このコースでは、人の暮らしに役立つ製品や機器などのプランニングやデザインを学んでいきます。カリキュラムでは、はじめに「感性演習」で必要な造形力の基礎を学び、「スキル演習」で専門技法を身につけます。その後、「専門演習」で実践的なスキルを学び、リサーチやマーケティングの考え方などを踏まえて企画を立てたり、モノをつくったりしていきます。基礎から段階を踏んで学修することで、高度な専門性が身につき、未来に向けた新しい提案をする力を養成することができます。
  この新しい学修体制でこれまでと何が変わるのかというと、個人的には学生の夢が今まで以上に実現しやすくなるのではないかと思っています。本学のデザイン学部は、高校時代からデザインの基礎学習をしていなくても学力試験やAO入試だけで受験できるという魅力がありますよね。その代わり、入学後はデザインに関する基礎を初級から学ぶことが多い分、学生は就職活動や将来どのような職業につくのかということを考えたり、行動したりするタイミングが少し遅くなるような印象がありました。しかし、新カリキュラムでは専門的なものに触れる授業が半年ほど早まる感じがあります。そうすると、例えば私の担当コースの場合、工業デザイナーや企業の商品企画になりたいと思う学生が早い段階で専門に触れられ、将来に向けた道筋も立てやすくなり、結果として夢がよりかないやすくなるのではないかと思います。
 

■では先生の研究室での取り組みについてお聞かせください。

 例えば、今年の卒業研究生(以下、卒研生)に、肩のせスピーカー(ウェアラブルスピーカー)と呼ばれるプロダクトの研究をしている学生がいます。この商品自体はすでにいくつかのメーカーから発売されていて、以前からあった市場ではありますが、ここ数年急に注目されヒットの気ざしを見せています。このようにこれから伸びていく市場の製品を研究対象とすることは面白いですし、学生にとってすごく勉強になるだろうと思います。学生の提案ですから実際に商品化はされませんが、似たコンセプトの商品がどこかの企業から発売されることがあるかもしれません。その時、市場においてその商品の評判や売上がその学生にとっての実践的な研究の答えとなるでしょう。
  私は音楽デバイスの歴史についても研究をしておりますが、肩のせスピーカーについて言えば、音楽好きの人にとっては久しぶりに登場した新しい商品群という印象があります。ただ、今はまだ買わない、もっと多くの商品が発売されるまで様子を見ているという人もけっこう多い。私の企業での経験から言うと、今後はおそらくハイスペックな高品位モデルと普及価格帯モデルなどが発売されていくでしょう。その中で「君たちならどういう商品企画を考えるか?」といったことを学生に問いかけています。
  今、卒研として取り組んでいる学生は、肩にのせて気にならない最大の大きさはどのくらいかを考えています。既存商品より音がよくなったりバッテリーが大容量になったとき、ユーザーが納得できる大きさには限度があるはずだからです。また、大きさだけでなく重さの限界はどのくらいかということや首周りの快適さ、形についても研究しています。最終的にはそれらを検証して、既存製品よりも魅力的なプロダクトを企画・デザインしようと取り組んでいます。
  このような研究は、まずは現行商品をよく調べるというところからスタートします。今の若い人たちはネット通販が便利になりすぎて、モノを触らないで買ってしまいがちですから、私は学生に「とにかく実物を見に行きなさい、触りに行きなさい」とアドバイスしています。そして複数の現行商品に触れ、その良い点、悪い点を分析して、自分なりの商品企画やデザインにつなげなさいと指導しています。
 

■それは実際に企業でプロダクトをデザインするときと同じプロセスなのでしょうか?

 そうです。一般的に企業での新商品開発は、この世にまだないまったく新しい発想に重点をおくように思われがちですが、今よりもちょっといいものをプランニングする過程もとても重要です。そのために現行商品があれば他社商品を含めそれをリサーチします。ここで大切なのはまだ目に見えない潜在需要を掘り起こすこと。例えば、ソニーやBOSEのモデルを見て、もっとこうすればよいのでは?とか、買おうと思って買わなかった人は何が引っかかって買わなかったのかといったことに仮説を立てて考えるのです。
  今、現行商品より大きなサイズのプロダクトをつくってみようと卒研生が取り組んでいるわけですが、これももしかしたら小さいものだと自宅のリビングのテレビで映画を観るときに使うには音圧がもの足りないから買わなかった人がいたのかもしれない。だとすれば、スピーカーのパーツが大きいものを作ってみてはどうかというところから研究がスタートしています。
  このようにコンセプトが決まったら、プロトタイピングと言って試作品をたくさんつくっていきます。後期には、卒研生がつくった試作品を、被験者の肩にのせて2時間ほど過ごしてもらい、使いごこちなどに関するアンケートをとっていきたいと思っています。そのために今、卒研生が自分で発泡スチロールを削り出して試作品を作っているところです。もちろん3Dプリンタを使ってのモデリングもできますが、私の信条としてまずは手で削ってサイズ感をしっかり頭に入れてから、最終形として3Dプリンタなどを使うという工程で進めています。
 

■授業では、どのようなことを教えていますか?

 今、話した内容とちょうど合致するのですが、2年生・前期にある「スキル演習」で製図を教えています。本コースはCADや3DCGなどコンピューターで絵を描きたいという学生が多く集まってきていますが、私の授業では、あえて手描きで図面を引かせています。有名なプロダクトを採寸させ、ケント紙に三面図と等角投影図を描かせるのです。例えばゲームのコントローラや携帯電話、体温計。今まで何気なく使っていたものを図面に描き起こすことで、サイズ感を理解してもらいたいのです。また、曲線部分はCADを使えば簡単に描けますが、コンパスを使って手で描くとなると少し手間がかかります。それによって手作業だったものがCADの登場でどれだけ楽になったのかということをきちんと理解してもらいたい。それから太い線、細い線を描き分ける、時間内に終わらせるといった仕事としての約束を守ることも授業の目的にしています。
  前期は将来、空間演出デザインコースに進みたい学生と、工業ものづくりデザインコースに進みたい学生が一緒に図面の基礎を学びますが、後期は、空間デザインに進みたい学生は建物の図面を描き、工業デザインに進みたい学生は私のところでプロダクトの製図をさらに深く学んでいきます。
  特に工業ものづくりデザインコースに進む学生は、この授業を通して生活の中で触れるいろいろなプロダクトを見る目が養われていくことになります。それが大きな狙いで、例えばヒンジがないとモノは開閉できないということを学生は作業を通して改めて気づきます。このようなことを、図面を手描きすることで早い段階で知っておくと、モノの開閉にはヒンジが必要で、そのためのスペースが必要だということをCADでの描画に活かせます。同様に、身近な製品がなぜ今ある形や構造になっているのかを考えるきっかけになり、今までスルーしていたものに対しても気づきが持てるのではないかと思います。
 

■受験生・高校生へのメッセージをお願いします。

  私はこれまで本学以外に複数の教育機関でデザイン教育に携わってきました。その経験から思うのは、やはりデザインは都会で学んでほしいということです。というのも、一貫して私は「プロダクトに触れなさい」ということを言っていますから、実際にモノを手に取って見られる、触れられる場所が近くにあるという環境が望ましいのです。身近に大型家電量販店やショッピングモールがあって、すぐにプロダクトに触れられる環境にないと、きっと私の話すことがなかなか理解できないはずです。その点、本学は東京の蒲田という好立地にありますから、デザインを学ぶ環境としては理想的です。
  また、本学は芸術学部や美術学部ではなくデザイン学部ということで純粋美術などの古いしがらみがない分、新しいことを学べるのではないかと思いますし、自分たちで未来をつくれるような期待感をすごく感じられる学部だと思います。 そのデザインの分野の中でいろいろな分野の先生方がいらっしゃるのも魅力ですね。
 

・次回は10月4日に配信予定です