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部品製造から地震、自然エネルギー発電、リハビリまで、幅広い分野で活用できる新しい制御の研究をしています!

2019年8月30日掲出

工学部機械工学科 佘 錦華 教授

佘 錦華教授

 もともと数学が好きで、数学の教師になりたかったという佘先生。大学では数学を多用する制御を学び、卒業後は中国の研究所で製鉄所の制御システム開発に携わったこともあり、現在は新しい制御理論を実用面も含めて研究しています。今回は、研究内容について詳しくお聞きしました。

■先生の研究室では、どのようなことに取り組んでいるのですか?

  ひとつはメカトロニクスの制御の精度や効率を高める研究を手がけています。メカトロニクスとは、機械にマイクロコンピュータなどの電子機器を組み込んで、目的の動きを実現できるように制御する技術のことです。
  研究の一例としては、“二次元繰返し制御理論”という新しい手法を生み出しました。最近、人工知能のディープラーニングが流行していますが、制御の分野にも機械自身が自分で学習しながら徐々に精度を高めていく“繰返し制御”という手法があります。これは数少ない和製の制御理論で、私の大学院博士課程の恩師中野 道雄先生(東京工業大学名誉教授)の研究グループが開発したものです。それをいかに設計しやすく、実際の現場での使用に耐えられるようにするかということで、全体の枠組みの構築に取り組みました。
  “繰返し制御”とは、制御だけでなく学習の要素も入っています。学習と制御は性質が違うものです。そこで、ひとつの次元を制御、もうひとつの次元を学習に分けて考えたのが、“二次元繰返し制御理論”です。この場合、学習がうまくできていれば、制御はあまりしなくてよく、逆に学習がうまくいかない場合は、制御を繰り返し重ねることで学習がうまくいった場合と同じくらいの結果を出せるようになります。そういう形で学習と制御を分けた枠組みを構築しました。
  今はこの手法を何に利用していくか、検討しているところです。例えば、車の部品の製造に活かせる可能性があります。部品を棒材から削り出す場合、どうしても振動が起きたりして、出来上がったモノの精度は落ちます。ですから正確さ、精密さを求めると、少しずつ削るしかないのですが、それでは時間がかかってしまいます。そこで“二次元繰返し理論”を使うと、振動や抵抗の影響を学習によって減らせるため、一回でたくさん削ることができ、製造効率を高められるのです。現在、研究室では、プロトタイプのシステムをつくって、検証しているところです。
  また、“等価入力外乱手法”という制御理論も開発し、研究を進めています。この手法の仕組みは、制御精度に影響を与える要因をいち早く推定し、制御入力を使って等価的に入力側で外乱を打ち消すという方法です。今、当研究室では、この手法を色々なところに使ってみています。例えば、本来、高層ビルの下には、地震の揺れをうまく抑制する制御装置(コントローラ)が設置されています。ところが2011年の東日本大震災の時は、予想外の低周波数の振動が来たため、制御装置が制御可能限界を超えて、止まってしまったのです。その原因は、従来の古い制御アルゴリズムを使っていたことにありました。そこで“等価入力外乱手法”を使えば、地震の揺れの波形とは反対の位相の波形を自動的につくって、振動を打ち消すことができるかもしれません。また、今までの制御は、地震の揺れを変位と速度でしか考えていませんでしたが、実は人を守るには加速度が重要なのです。加速度とは、つまり力です。建物が振動するときに加速度を抑えてやると、モノが落下せず、安全になります。そういう立場でもう一度、従来の振動制御のコントローラをつくり直せば、より良くなるはずだと考えています。
  なお、“等価入力外乱手法”は、自然エネルギーによる発電にも活用できます。例えば風力発電の場合、風が一定に吹いているわけではないので、それをそのまま使って発電すると、電気も不安定になります。しかし、電力は一定でないと使えませんから、現状は出力電力を一定に保つために、たくさんのコンデンサや蓄電池を使っています。そこで“等価入力外乱手法”を用いると、振動する分を外乱として前もって入力側で打ち消すので、風自体が一定でなくても、出力の安定化を図ることができるのです。
  “二次元繰返し理論”や“等価入力外乱手法”は、このような形で色々なところへの応用が期待でき、実用に近い研究ですから、私の研究室の学生たちも研究に加わっています。

等価入力外乱手法による出力電力安定化のイメージ

■「次世代介護ロボット」の開発も手がけているそうですが。

 脳溢血などで倒れた人が半身不随になった場合のリハビリを支援するロボットですね。以前から研究をしていましたが、最近、本学の蒲田キャンパスにある医療保健学部と一緒に研究を進めています。脳溢血などの後遺症で半身が動かず、歩けない人のリハビリでは、身体をベルトで吊るして歩行訓練する機械を用いる場合がありますが、非常に大きいものなので、リハビリを扱う病院でもあまり数多くありませんので、患者さんがたくさんいる場合は困りますよね。また、そういう装置を使えない人には、理学療法士が担ぐような形でサポートして一緒に歩く訓練をしますが、力仕事ですので、理学療法士は大変です。そこで座りながら、動く方の足と動かない方の足をそれぞれリハビリするようなものがつくれないかと考えたのです。
  今、実際につくっているのは、自転車のペダルみたいなもので、左右それぞれが独立して回転する装置です。ペダルに発生する負荷もコンピュータで制御するので、患者さんの状況に応じて踏むときに感じる抵抗を自動的に変えることができます。これが形にできれば、理学療法士の負担も軽減できると思います。
 

■制御の研究の面白さとは、どんなところにありますか?

理論と実験を重ね、人が絶対できないと思っていることを苦労して実現できた時は喜びも格別ですね。誰もが「あっ!」と驚くみんなの顔を見ることも面白いですね。

■受験生・高校生へのメッセージをお願いします。

まず、自分の好きなことや興味のあることを見つけて、それをどんどん拡げていくことが大切です。好きなことであれば、一生懸命、努力できますからね。同時に、目標にできる人を見つけることもおすすめします。「こういう人になりたい」と思えば、具体的な目標に向かって頑張れると思います。もちろん、好きなことをしていても、簡単に成功できるわけではありません。色々な苦労を重ねながら、結果が出るまで諦めずにねばり強く、自分を信じてやり続けて欲しいですね。

■工学部機械工学科:
http://www.wineegou.com/gakubu/eng/me.html

・次回は8月30日に配信予定です